12.都の西北に御乱心 所沢市 (esさん 埼玉県在住)

 私はもう3年間この学校に通っていますのでもう慣れましたが、この人間科学部というのはなんだか変な建物です。聞くところによるとなんとか建築賞をもらったとかもらわないとか。まあ外見は確かに格好良さげです。プラモデルみたいで。建物は全体白、もしくは灰色です。とても陰気です。怪しい病院の隔離病棟のようです。確かに勉強するのにはいいかもしれませんが、そればかりを優先して、なんだか憂鬱になってしまう校舎、というのもどうかと思います。所沢という不便なところなので、毎日の生活が学校と下宿の往復だけになってしまう友人もいます。彼は雨が降った日には鬱病になる、鬱病になる、とぼやいていました。いつのまにか見かけなくなりましたが。
  この学校、廊下の真ん中に柱が立っています。非常に邪魔です。これは何なんだろうと、皆が思っています。先生もそうです。建物はわかりやすく言うとカタカナの「コ」の形になっています。(航空写真で見ると)ただ実際にはそれほど分かりやすくありません。初めて訪れる人には理解不能です。学内で迷い込んで校舎内での待ち合わせに30分遅れた女の子がいる、というのは誇張ではありません。
 金属のプレートにモダンアートの様なものを印刷したものが、壁のあちこちに掲げられています。これは実は校舎の地図なのですが、役に立ったことはありません。今でも理解できないので見る気は起きません。土地自体が斜めになっており、校舎はピラミッド状なので(断面図を考えると)一階を歩いていたはずが二階にいたり、突然地下通路が出現したりします。
 つい数週間前のことですが、締切直前にレポートを出しに8階へ行こうとしたら、エレベーターが7階までしか無くて、かなり動揺しました。前に乗ったときには 8階まであったのに、今回は無かったのです。結局、少し入った所に薄暗い階段があったので、8階に行き着くことはできました。どうも、8階まで行くエレベーターと、7階までのエレベーターが存在していたようでした。
 先日4階にある実習室から、重い機材を抱えて6階にある研究室に戻ろうとすると、友人がモニタを抱えて研究室とは全く反対の方向へ歩き出したのです。「まだよく分からないんだ」と何事もないように言っていましたが、皆かなり動揺していました。もう3年も通っているのに・。
 校舎の奥地に向かうと、そこにはラットの臭いが立ちこめています。うーん何だろうと思っていると、いつのまにか酸素マスクを付けさせられて、自転車こぎをやらされています。これが実に苦しい。(もちろん実験に際しては了解をとっています、念のため)
 この学部は優秀なスポーツ選手を多く抱えていますので、運動施設が異様に充実しています。トラック、棒高跳び、野球場、テニスコート、室内プールはもちろんのこと、飛び込み台まであります。体育館の天井は異常に高く、体操選手のためのぼよぼよした床(新体操とかをやるところですね)、吊り輪、鉄棒、トランポリン、ピアノ(なぜだか柔道をするところの横にあります)、ジム!!!(ここには僕が初めてみた器具までありました。)学校の正門から入ってくると、まず校舎の先にそういった運動施設が目に入ります。どう見たって運動公園です。緑は豊かだし。そういった施設と、校舎の殺伐とした様子を見て、友人は「三カ島 強化人間製造所だ」と評しました。(三カ島というのは地名です。)でも、実にそんな感じです。夜校舎を見ると、どう考えても秘密基地としか思えません。
 そして、ここには大きな謎があります。高田馬場校舎では全身像の大隈先生が、ここ所沢ではなぜか胸像です。かなり控えめな。
 でもまあ、雨漏りさえ無くなれば、まあ我慢出来ないこともありません。住む分にはどんなマンションよりも広いですし、夜は静かですし、折り畳みベットはあるし、寝袋もありますし、シャワーもあります、ご飯は作らなくて済みますし、朝誰かが起こしてくれるので授業に遅刻しません。
 うーん。見栄えのする建物と生活しやすい建物って別なんですね。僕としては、暮らしやすくて落ちつく建物の方が好きですね。

 長さ第3位です。私のもらったメールではもっと長いのがあります。さてデザインの良いと言われる建物はどれをとっても使いにくいものです。でも一つだけ例外があります...。

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